はじめに
梅田病院(東京都足立区)にお勤めの看護師さんであり、ハンドケアマイスターでもある生澤 由美子さん。生澤さんは、病棟でのよりよい看護ケアの実践を目指し、フィトセラピーやハンドケアを用いた「フィトセラピーを用いた睡眠改善への試み」を発表しました。
発表者プロフィール
生澤 由美子(いけざわ ゆみこ)さん
医療法人財団 梅田病院(足立区)地域包括ケア病棟・一般病棟勤務
看護師
ハンドケアセラピスト・ハンドケアマイスター
日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師
弾性ストッキング・コンダクター
生澤さんへインタビュー
私が考える園芸療法を含むフィトセラピーの特徴は、自然の中の穏やかな生命である植物の多様性を継続的に活用できる唯一の療法であるということです。室内活動においても植物から得られる生命力あふれる材料を活用でき、屋外、簡易ハウスや屋根付きのスペースなどでの実施環境は、そこへ移動するだけまたは見るだけでも多様な知覚刺激を受けることが可能です。
また、活動に参加すると、五感(視覚、触覚、嗅覚、味覚、聴覚)から直接脳に伝達される知覚刺激を容易にかつ複合的に取り入れることができます。一方、ヒトは常に何かを知覚したいという欲求があるとされており、それらの感覚を遮断された状態では、機能面に加えて精神面に悪影響があると報告されています。アロマの嗅覚刺激をはじめ、五感からの知覚刺激が生活の中でいかに重要かがわかります。
Q.なぜハンドケアセラピストになろうと思いましたか?
A.以前勤めていた整形外科病院では、手のこわばりや関節痛のあるリウマチ患者様が、膝や股関節の手術の為に入院されてきていました。関節痛があることで、生活する上で不安を抱えていらっしゃる患者様が多かった為、少しでも不安や痛みの緩和とともに心に寄り添う事の出来る看護ができたらと考え、ハンドケアの技術を身につけたいと思いました。
Q.「フィトセラピーを用いた睡眠改善への試み」を発表した経緯を教えてください。
A.認知症のある高齢患者様が今まで過ごされていた自宅や施設と違う、病室という治療を受ける環境の中で、患者様の自由が制限され、ストレスや不安から昼夜逆転し、俳諧や転倒を起こしてしまう患者様は少なくはありません。夜勤業務の中で、危険行動のある患者様の所には頻回に訪室したり、4点柵またはセンサーマットの設置を行っていますが、患者様の昼夜逆転や危険行動、不安な気持ちはあまり変わってはいない様に思いました。そこで、私たち看護師がどのような看護ケアを行ったら「認知症高齢患者様の抱えている不安が軽減でき、夜間の睡眠がスムーズに得られることで患者様が前向きになり退院に向けての自信に繋がる」のか、看護研究を通して、安全で安心な看護の提供が私たち自身にも自信へと繋がることを期待したいと願い「フィトセラピーを用いた睡眠改善への試み」を院内研究発表させていただきました。
Q.看護研究にフィトセラピーをとりいれようと思ったきっかけは何ですか?
A.整形外科病院で勤務していた頃、手のこわばりや関節痛のあるリウマチ患者様のフィトセラピーを用いたハンドケアを行っている間、患者様から退院してからの生活スタイルでの悩みを話されるなど相談を受けたことがありました。ハンドケアを行った翌日には、その患者様から「朝起きたときの手のこわばりが和らいだわ、手が軽くなっているの、またやってもらえると嬉しいわ」と両手を私に見せ笑顔で頂いたお言葉が私の中ではフィトセラピーを通して患者様の不安や痛みが少しでも軽減でき心の支えになることができたのかなと嬉しく感じさせられた事を覚えています。このことがきっかけで、認知症高齢者の患者様がフィトセラピーを用いた看護ケアで良い睡眠が得られ、昼夜逆転が予防でき、前向きな気持ちでリハビリ意欲をもつことができるのではないかと考え、看護ケアとしてフィトセラピーを取り入れようと思いました。
研究結果
発表者:生澤由美子・風間あかね・早房美恵・山岡豊子
研究結果の詳細は下記をご覧ください。